2016年8月13日土曜日

明海大学外国語学部の新たな挑戦

明海大学浦安キャンパス教育後援会会報
 『潮風』 46号 2016年7月31日発行



2016年7月6日水曜日

宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢

明海大学関連のある会報に短い文章の寄稿を求められました。その会の関係者以外の目に触れる機会はほとんどないと思いますので、以下に再掲いたします。なお、この文章の原タイトルはここにあるとおり、「宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢」だったのですが、発行された会報ではなぜか「宮田慶三郎先生が大学創設に賭けた夢」となっていました。「先生」が加わってしまったために、わたくしの宮田慶三郎さんに対する敬意がぼやけてしまった感があり、残念です。


宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢
大津由紀雄

この春休み、宮田慶三郎先生(以下、「慶三郎」と書かせていただきます)のご著書3冊を読み返しました。建学の精神に託された慶三郎の真意を確かめるためです。なぜ真意を確かめる必要があったのか、それは「社会性」、「創造性」、「合理性」の間にどんな関係があるのか、を探りたいと思ったからです。3つをただ横並びにしただけとは到底思えなかったので、この点を探ることによって慶三郎が明海大学創設にあたって思い描いた夢の正体を浮き彫りにできるだろうと考えたのです。結果として、以前からのわたくしの解釈はおそらく間違っていないだろうという確信に近いものを得ることができました。

慶三郎は「社会性、創造性、合理性」といわばトップダウン(外から内へ)に並べていますが、思索の過程では「合理性、創造性、社会性」とボトムアップ(内から外へ)に考えが進んでいったのではないでしょうか。理に適った思索(合理性)は創造的な思想を生み出す(創造性)。大学の役割はそうした思索の結果を社会に広く発信し、人々の生活を豊かにすることにある(社会性)。そう解釈することによって、「合理性」、「創造性」、「社会性」は有機的な関連を持つことになります。この解釈には異論もあるでしょうが、慶三郎の思想の深さと大学創設に賭けた夢を正確に理解するためには必要なものと思います。


2016年6月8日水曜日

先々代外国語学部長 原口庄輔さんのご命日

6月7日、先々代の外国語学部長であった原口庄輔さんのご命日がまた巡ってきました。亡くなられたのは2012年ですので、4年の歳月が経過したことになります。

原口さんとは古くからのおつきあいで、「大津君、大津君」ととてもかわいがっていただきました。

原口さんは世界的な音韻論学者であると同時に、世界的に有名な酒呑みで、いつも楽しいお酒でした。

2013年4月、原口さんにとって最後の大学拠点となった明海大学へわたくしも移籍しました。そして、この4月、外国語学部長・大学院応用言語学研究科長となり、原口さんがかつて4年間執務された外国語学部長室へ引っ越してきました。じつは、うかつにも、ごく最近になるまで、そのことに気づいていませんでした。数日前、もう大学内にひと気がなくなった午後8時ごろ、学部長室で仕事をしていたとき、ふっと、原口さんを感じたのです。「大津君、呑もうよ!」と声をかけられたような気がしたのです。ちょっと怖い話ではありますが、不思議なことに、怖さは感じませんでした。《そうか、ここは原口さんの拠点だったのだ!》

以来、原口さんは遊びにはきませんが、きょうはお命日なので、シャクヤクの花を研究室に飾りました。白でとも思ったのですが、「大津君、もう少し色気が欲しいよ」と言われそうなので、ちょっとばかり艶のあるものにしました。

いま、かつて原口さんが意欲を燃やしていた外国語学部・応用言語学研究科の改革に取り組んでいます。日本の非スーパーグローバル大学級大学改革のモデルケースにしたいという気持ちもあります。

原口さん、力を貸してください。

2016年5月21日土曜日

高校生のみなさん、「グローバル化」について一緒に考えてみませんか(大津研blogより転載)

5月29日(日曜日)に明海大学外国語学部のOne Dayセミナーが開催されます。
http://www.meikai.ac.jp/opencampus/urayasu/file/2016-0418-1421.pdf

この種の催しは通常、その大学の受験を決めている高校生を主な対象としますが、このセミナーはむしろ、最近、よく耳にする「グローバル化」ということに関心のある高校生に参加してもらいたいと考えて企画しました。もちろん、参加してみたら興味を覚えたので、明海大学外国語学部を受験してみたいという気持ちになったということであれば、大歓迎です。

当日は、まず、わたくしが明海大学外国語学部が考える、「グローバル精神」の基盤にあるものについて、手短に、話をします。そのあと、日本語学科、英米語学科、中国語学科の教員が「グローバル社会に生きる私たち」というテーマで、授業をします。授業の後はみなさんに参加してもらって、いろいろな活動をしようと考えています。

そのあと、昼食です。明海大学の学食で、教員や学生と一緒に楽しいひとときを過ごしてもらおうという狙いです。保護者の方も大歓迎です。

午後の最初の行事は外国語キャンパスツアーです。これは、英語・中国語・日本語の3言語で、明海大学浦安キャンパスを巡ってもらおうという趣向です。ガイドするのは、それぞれのことばを母語とする人たち(ネイティブスピーカーたち)です。いくつかのグループに分かれてツアーをしますが、それぞれのグループで3つのことばに触れることができます。わからなくても大丈夫。むしろ、知らないことばに触れる体験をするのが狙いだと思ってください。日本語については、日本語を外国語として学んでいる留学生が担当します。

ツアーの後は日本語学科、英米語学科、中国語学科に分かれて、各学科の教員が学科の教育方針や内容について説明します。

最後は修了式です。一日の体験を振り返り、修了証を差し上げます。

高校一年生、二年生も参加可能です。保護者の方、先生方も大歓迎です。

事前申し込みが必要ですので、以下のページから申し込んでください。
http://meikai-m.gdd.jp/view/183807/?guid=on

英米語学科に関しては、『英語の学び方』の著者たちに会うこともできます。
http://oyukio.blogspot.jp/2016/05/2015725-httpoyukio.html

お待ちしています。

2016年5月2日月曜日

制約はできるだけ少なく

学部長というのはこれだけも多くの、しかも、じつにさまざまな仕事に関わらなくてはならないのかということを思い知らされた、怒涛のような一か月でした。「日誌」といっても毎日更新するということではありません」とは書きましたが、週に一度くらいの更新はするつもりでいたのですが、これでは「日誌」ではなく、「月報」になってしまいますね。

出席すべき会議を忘れたり、仕事が遅れてたくさんの方にご迷惑をおかけしたり、お詫びすべきことは数え切れません。しかし、3人の学科主任が献身的に支えて下さり、また、事務職員の方々も本来の職務の域を超えてのご支援をいただき、外国語学部改革へ向けた強い気持ちだけは変わることなく保持することができました。

学部長室も少しずつ大津風に変え始めました。先週末はなんにんかの有志に手伝ってもらい、紀要など出版物の残部を目に見えないところに移しました。そして、できた空間にホワイトボードを入れました。これでかなり議論がしやすくなります。カプセル式コーヒーメーカーも揃えましたので、マグを持参してくだされば、おいしいコーヒーを飲みながら、ソファで談笑できます。あ、紙コップでよろしければ、常備してあります。

ある程度、片づいてみると、学部長室の窓の外には整備された「庭園」が広がっていることに気づきました。初夏を迎えたいまは木々の緑が美しい。

さて、初回の記事はけっこうたくさんの方々に読んでいただいたようです。もちろん、どなたが読んでくださったのかはわかりませんが、数から判断すると、明海大学の学生、院生、教職員だけでなく、保護者の方々や、さらにはもっと広く、直接、明海大学とつながりを持たない方々にも読んでいただいたようです。ありがたいことです。

きょうは主に学生のみなさんに向けたメッセージを書こうと思います。もちろん、それ以外の読者も大歓迎です。

以前ほど耳にしなくなったような気がしますが、「五月病」ということばがあります。4月に入学した新入生が新たな環境に戸惑い、精神的に病んでしまう現象を指すことばです。「新たな環境に戸惑」う原因はいろいろあります。受験勉強で燃え尽きてしまった。志望していた大学への入学が叶わず、一度はあきらめて入学してみたものの、入学した大学は自分の考えていたところとはかけ離れていて、通う意欲が失せてしまった。時間割をはじめ、行動の枠組みがほとんど与えられていた高校までの生活と異なり、自分で考え、判断しなくてはいけない部分が増え、不安で仕方ない。楽しく語り合うことができる友だちができない。などなど。ちなみに、いま挙げたのは。五月病に罹ってしまい、わたくしのところに相談に来た学生たちが実際に語ったことの一部です。

明海大学でもそうですが、いまの日本の大学は学生に対してとても行き届いているところがあって、新入生はクラスに分けられ、それぞれのクラスには担任がつきます。担任は新入生の不安を少しでも減らそうと、いろいろと工夫を凝らして学生たちと向き合います。

《だから、五月病なんか怖くない!》と、いう具合にいけばいいのですがね。なかなか、そうはいきません。人と人との関係には相性というものがありますから。いくらクラスに分けられ、担任がついても、そのクラスの雰囲気になじめないとか、担任の先生が苦手なタイプだったりとか、ありますからね。そのときに、大学というところのよいところは、その気になれば、いろいろなことができるということなんです。まずは、自分が心を割って話せそうな友人や先生を見つけましょう。大学では一時間ごとに違った先生がやってきます。受講する学生の顔ぶれも違います。

でも、そもそも、声をかけるのが苦手なんだという人も少なくないでしょう。それなら、先生にメールを出しましょう。自己紹介をして、こんなことを考えている、あ、もちろん、こんなことで悩んでいるというのでもいいですよ。これなら、面と向かって話すより、ちょっと楽でしょ。

そのときにね、どんな先生でもいいんですよ。べつに担任の先生でなくてもいい。早い話が、たとえば、わたくしのことは入学式の後のオリエンテーションのときに顔を見ただけだというのでもいいんです。大学のもう1つのよいところ、いろいろな人がいるということ、ほんとうに多様なんです。

そんなこと言ったって、面識もないのにとか、学部長職で忙しいだろう(実際、そうだって、冒頭に書きましたものね)とか、そんなこと、考える必要はありません。そういう「制約」はできるだけ少なく考えればいいのです。だって、どんなに忙しくても、学生とお茶を飲む時間ぐらいはなんとか工夫できないはずがありませんものね。

そうそう、わたくしのメアドですが、以下のとおりです。
oyukio&meikai.ac.jp
(&の部分を@に代えて使ってください。こうしないと悪意のあるロボットにメアドを盗まれてしまう危険性があるからです。)

そして、メールを書くときには最低限のルールを守りましょう。以下を参考してください。
http://otsuyukio.blogspot.jp/2015/06/blog-post_36.html



2016年4月1日金曜日

はじめまして

2016年4月1日付で明海大学外国語学部長、同大学大学院応用言語学研究科長に就くことになりました。これまでの副学長(大学院担当)、複言語・複文化(P&P)教育センター長もそのまま務めますので、本来の教授職と併せれば、5つの職を兼務することになります。

考えるまでもなく、この5つをまっとうに兼務することはまず不可能です。にもかかわらず、理事長・学長からの就任要請をお受けしたのは明海大学の人文系学部と大学院の改革を断行し、その再生を図れという、強い要請意図を感じ取ったからです。そのとき、わたくしは、その改革が成功すれば、それは明海大学の枠を超え、一部、「スーパーグローバル大学」級の大学を除いた、人文系大学の再生のモデルケースとなるであろうという野望を抱いたことも正直に告白しておきましょう。

その改革の根本にあるものはなにかと問われれば、それは本道への回帰だということになります。少子化傾向の中、入学者の確保に汲々とする人文系大学・学部の多くは就職率の向上やそれに連なるTOEIC等の英語力検定試験のスコアの向上のみに力を注いでいます。しかし、いま必要なのはそうした対処療法的な対策に終始するのではなく、中長期的展望に立って大学・学部の目指すところを明確に定め、それに向かっての工程を明らかにすることであるとわたくしは考えます。

わが外国語学部はその目指すところを、複言語・複文化主義に基づき、真の意味でのグローバル精神を持った人間を育成することと定め、その目標に向かって、さまざまな試みを行っていきます。

まずは語学教育。明海大学では昨年秋、複言語・複文化(P&P)教育センターを開設しました。外国語学部はP&P教育センターと連携して、母語の力に根ざした外国語教育を実現させることを目指します。具体的には、学生諸君に対して、母語を対象にことばを客観的対象として認識し、その認識を活かして、母語の効果的運用とともに、外国語の効率的学習できるよう支援を行います。外国語としては、ある程度、きちんとした運用能力が身につくことを目指す外国語のほかに、その基本的仕組みと基礎的な表現が身につくことを目指す外国語の2つを学びます。もちろん、希望すれば、それ以外の外国語を学ぶこともできるようなカリキュラムも編んであります。

上記の考えに基づき、語学科目については、それぞれの言語を母語とする教員(ネイティブ・スピーカー)と日本人教員による授業を効果的に組み合わせた授業編成がなされています。

また、人間がことばを手に入れ、さらには、文字を作り出したことにより、文化の形成と伝播・発展が可能となりました。その意味で、ことばと文化は切っても切り離せない関係にあります。外国語学部では、ここでもP&P教育センターと連携し、さまざまな文化的背景を持った教員を配して、世界の諸文化について学び、考えることができるよう、工夫を凝らしています

このような機会を活用することによって、学生諸君は言語と文化の相対性の認識というグローバル精神の中核を自然に身につけることができます。また、上に略述したことばの学びによって、付け焼刃ではない、一生ものの、母語や外国語の運用能力が身につきます。目先のことだけに目を奪われるのではなく、自信につながる、本物の力を身につけるための環境を整えていきたいと考えています。

こうした試みは簡単には成功しません。試行錯誤を繰り返しながら、徐々に目指すところに近づいていく。ただし、ある一定の流れが形成されれば、そこから先は勢いというものが後押しをしてくれるでしょう。そういう状態に達することができるよう、学部長任期の2年間の間にできるだけのことをしたいと考えています。みなさんのご支援をお願いいたします。

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このブログは主として明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科コミュニティ(学生・院生、教職員、卒業生・修了生)に対しての情報発信のために始めるものですが、明海大学の他学部・他研究科のみなさんのご愛読も歓迎いたします。さらに、単に明海大学内部だけでなく、このブログが広く読まれるようになることを秘かに期待しています。

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「日誌」といっても毎日更新するということではありません。その時々に感じたこと、思ったこと、話したことなどを綴ります。