2016年7月6日水曜日

宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢

明海大学関連のある会報に短い文章の寄稿を求められました。その会の関係者以外の目に触れる機会はほとんどないと思いますので、以下に再掲いたします。なお、この文章の原タイトルはここにあるとおり、「宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢」だったのですが、発行された会報ではなぜか「宮田慶三郎先生が大学創設に賭けた夢」となっていました。「先生」が加わってしまったために、わたくしの宮田慶三郎さんに対する敬意がぼやけてしまった感があり、残念です。


宮田慶三郎が大学創設に賭けた夢
大津由紀雄

この春休み、宮田慶三郎先生(以下、「慶三郎」と書かせていただきます)のご著書3冊を読み返しました。建学の精神に託された慶三郎の真意を確かめるためです。なぜ真意を確かめる必要があったのか、それは「社会性」、「創造性」、「合理性」の間にどんな関係があるのか、を探りたいと思ったからです。3つをただ横並びにしただけとは到底思えなかったので、この点を探ることによって慶三郎が明海大学創設にあたって思い描いた夢の正体を浮き彫りにできるだろうと考えたのです。結果として、以前からのわたくしの解釈はおそらく間違っていないだろうという確信に近いものを得ることができました。

慶三郎は「社会性、創造性、合理性」といわばトップダウン(外から内へ)に並べていますが、思索の過程では「合理性、創造性、社会性」とボトムアップ(内から外へ)に考えが進んでいったのではないでしょうか。理に適った思索(合理性)は創造的な思想を生み出す(創造性)。大学の役割はそうした思索の結果を社会に広く発信し、人々の生活を豊かにすることにある(社会性)。そう解釈することによって、「合理性」、「創造性」、「社会性」は有機的な関連を持つことになります。この解釈には異論もあるでしょうが、慶三郎の思想の深さと大学創設に賭けた夢を正確に理解するためには必要なものと思います。