2017年9月18日月曜日

オープンキャンパスでの話(2)

2017年9月17日(日曜日)
 きょうは外国語学習の話をしましょう。
みなさん、ゲーテという人のことを聞いたことがありますか。18世紀から19世紀にかけて重要な作品をたくさん創った、ドイツを代表する文豪ですね。
 そのゲーテが残した名言のなかでもよく知られているものとして、「外国語について知らない人はじぶんの母語についても知らない」というものがあります。はじめて聞くと意外な感じがするかもしれませんが、よく考えると合点がいきます。
 わたしたち自身のことば、「母語」と呼びますが、母語は無意識のうちに自然に身についてしまうので、それについて意識的になるということはあまりありません。でも、外国語を習い始めると、母語の意外な性質に気づかされることがしょっちゅうあります。例を挙げましょう。英語を習い始めると、英語の名詞には複数形というのがあって、複数のものについて述べるときには複数形を使わないといけないということを知ります。「二頭のトラ」だったら、two tigersですね。two tigerではだめです。でも、日本語にも「~たち」というのがあって、たとえば、「トラたち」と言えば、確実に複数であることを表すことができます。ところが、ニュースで、アナウンサーが「けさ、新浦安動物園からトラたちが脱走しました」と言っても、逃げたトラは一頭である場合だってあるのです。わかりますか。わからなかったら、「桃太郎さんたちは鬼退治に鬼ヶ島へ行きました」という文を考えてみてください。「桃太郎さん」と言っていますが、桃太郎さんは一人。もうわかりましたね。
 こんな具合に、外国語を学ぶことによって、自分の母語についての理解を深めることができる。ゲーテはそんなことを念頭に、「外国語について知らない人はじぶんの母語についても知らない」と言ったのです。明海大学外国語学部では学生ひとりひとりが専攻する外国語の運用能力を高めることだけでなく、自分自身のことば、母語の性質をよりよく理解し、母語の力を十分に活用できるようになることを目指しています。